僕の庭
僕は、びわの話をしていた。


彼はね、優しい子なんだ。

僕が一人なのを分かっていたんだね。
出かけて行っても必ず帰ってきて、一緒に眠ってくれた。

僕が絵に行き詰まった時は、慰めてくれるようにしっぽをすり寄せてきてね。
どこからかスミレの花を咥えてきた事もあったよ。

僕を気遣ってくれているようで、嬉しかった。彼のお陰で乗り越えられたスランプも、幾つあったかしれないんだ。


ふ、と墓を見やって、僕はぎこちない笑みを浮かべた。

彼はね、僕の足が不自由なのを分かっていたんだ。

猫は、飼い主に死に様を見せないっていう話を知ってるかい?
猫や犬は自分の死期が分かるんだそうだ。死期を悟った彼らは、誰も見ていない場所を探して、そこでひっそりと命が尽きるのを待つんだと。

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