不死身の俺を殺してくれ
紅子は瞳をきらきらと輝かせ、両手を胸の前で合わせて、妙案だとばかりに嬉しそうに破顔する。
「生憎だが、菓子作りは未経験だ」
料理は生きていく上で自然と身に付いた。だが菓子作りについては百年以上も生きていながら、未だ経験をしたことはなかった。
作る手間を考えると、買った物を食す方が合理的だと思っていたからだ。
「平気よ。私がついているんだから」
どうするべきか思考していると、さくらによく似た紅子の瞳が、煉の姿をじっと見つめ捕らえていた。
「どうだった? お母さんの料理教室」
陽が傾き始め、橙色に染まっていく空を眺めながら、二人はゆっくり家路を歩く。さくらは車道側を歩いている煉の横顔を見上げた。
「ああ、実に有意義な時間を過ごせた。感謝している」
「なら良かった。私のお母さん、ちょっとテンションが高い人だから、煉は苦手かなって心配してたの」
煉の満足げな表情に安堵し、思っていたことを口にする。
さくらは料理教室へ向かった二人を胸裏では心配していた。
自身の母親と煉の性格が合わず、大変なことになっているのではないかと、気が気ではなかったらしい。実際はさくらの杞憂《きゆう》で終わったようだが。
「そんなことはない。料理について色々なことを聞けた。昔ながらの豆知識も豊富な方だった」
「そっか。で、何を作ったの?」
「今日の夕食に作ろうと思っている。だから、それまでの楽しみに取っておけ」
「そう言われると期待度上がっちゃうなー」
冷蔵庫の中身を脳裏に思い浮かべて、食材の有無を確認していた煉は、さくらの期待の眼差しを一身に受け、満更でもない様子だった。
「生憎だが、菓子作りは未経験だ」
料理は生きていく上で自然と身に付いた。だが菓子作りについては百年以上も生きていながら、未だ経験をしたことはなかった。
作る手間を考えると、買った物を食す方が合理的だと思っていたからだ。
「平気よ。私がついているんだから」
どうするべきか思考していると、さくらによく似た紅子の瞳が、煉の姿をじっと見つめ捕らえていた。
「どうだった? お母さんの料理教室」
陽が傾き始め、橙色に染まっていく空を眺めながら、二人はゆっくり家路を歩く。さくらは車道側を歩いている煉の横顔を見上げた。
「ああ、実に有意義な時間を過ごせた。感謝している」
「なら良かった。私のお母さん、ちょっとテンションが高い人だから、煉は苦手かなって心配してたの」
煉の満足げな表情に安堵し、思っていたことを口にする。
さくらは料理教室へ向かった二人を胸裏では心配していた。
自身の母親と煉の性格が合わず、大変なことになっているのではないかと、気が気ではなかったらしい。実際はさくらの杞憂《きゆう》で終わったようだが。
「そんなことはない。料理について色々なことを聞けた。昔ながらの豆知識も豊富な方だった」
「そっか。で、何を作ったの?」
「今日の夕食に作ろうと思っている。だから、それまでの楽しみに取っておけ」
「そう言われると期待度上がっちゃうなー」
冷蔵庫の中身を脳裏に思い浮かべて、食材の有無を確認していた煉は、さくらの期待の眼差しを一身に受け、満更でもない様子だった。