不死身の俺を殺してくれ
 どうやら、今朝のショッキングな出来事が原因で、お弁当の存在をすっかり忘れてきてしまったらしい。

「優は今日、お弁当?」

「ううん。社食だよ。一緒に行く?」

「そうする」

 お弁当を忘れて来てしまったのなら、仕方ない。後で煉に謝罪のメールを入れて、今日は食堂でお昼を済ませよう。

 さくらはオフィスチェアから立ち上がり、財布を手にして、優と共に社員食堂へ向かった。


 そして、珍しいことに今日の社員食堂は何故か混雑していた。

「え? どうしてこんなに混んでるの?」

「夏バテ対策メニューが、社員の間で、ちょっとしたブームになってるの。だからだと思うよ」

 優に手招きをされて後をついて行くと、食堂内に設置されている、黒板式のミニ看板が目につく。

 食べやすさ重視、さっぱり定食。と、スタミナ満点、がっつり定食。の二品が看板に大きく宣伝されていた。

「あ、今日はソルトシャーベット付きだって。美味しそう」

 優はメニューを指差して、さくらを見上げる。

 さっぱり定食は女性社員に人気があるようで、周りの女性社員達は、こぞってその定食を選んでいた。反対に、男性社員はがっつり定食を選んでいる人が多く見受けられる。

「やっぱり、カロリーが低いのは、さっぱり定食かな?」

 不親切なことにメニュー表には、カロリーのことまでは記載されていない。油を使った肉定食と、野菜中心の定食。見た目からしても、さっぱり定食の方が、やはりカロリーは低そうだった。
 
「んー。どうだろう? カロリー気になるの?」

「えっと……少し、ね」

 本当ならば、がっつり定食を注文したい。けれど、今はカロリーという単語そのものが怖い。カロリー恐怖症に陥ってしまいそうだった。

 メニュー表の前で数分間悩んだ結果、さくらは優と同じさっぱり定食を注文した。

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