不死身の俺を殺してくれ
 定食を食べ終えて、さくらは一見ただのシロップ無しの真っ白な、かき氷に見えるソルトシャーベットを口に運ぶ。

「──でね。九月の半ばくらいに結婚式を挙げることに決まったから、さくらも彼氏さんと一緒に来て欲しいな。招待状は後で改めて送るね」

 少しだけ頬を赤らめながら、自身の結婚式について嬉しそうに語る優の姿に、思わず笑みが溢れる。

 今月中に入籍をする旨を以前から聞かされていたさくらとしては、実に感慨深いものがあった。

「もちろん参加するよ。優の一生に一度の大切な日だもんね。ちなみにウェディングドレスを着るの?」

「うん、ウェディングドレスだよ。白無垢(しろむく)にしようか迷ったんだけど、司《つかさ》さんと相談して、ドレスに決めました」

 純白のドレスに身を包み、教会前で新郎の彼と共に並んで微笑む優の姿は、きっと最上級に綺麗に輝いていそうだ。

 目の前の幸せそうな優を眺めながら思考に耽る。すると、さくらの脳内には、とある疑問がゆらりと舞い降りてきた。

 結婚式に参加となると、当然のことだが正装をしなければならない。しかし、さくらは煉の正装姿を、未だ一度も目にしたことはない。
 
 煉は普段から、家事のときに動きやすいという理由で、某有名スポーツメーカの黒色のジャージを愛用している。

 そして、その上にエプロンを着けている訳で、正直に言って煉のファッションセンスは皆無だった。
 
 仮に煉にスーツを着せたとしても、一歩間違えばホストに見えなくもない。それとも、どこぞの怖い系の人に見えるか。

 ついでに、サングラスなんて掛けてみたらどうかな。

 脳裏でサングラスを掛けた、スーツ姿の煉を想像してみる。

 ……うん、これは駄目ね。確実に職質される姿が目に見える。そして、煉のことだから『現在は主夫をしている』って至極真面目な顔をして答えそうだ。

 煉の様々な姿を想像していると、何だか楽しさで可笑(おか)しくなってしまい、堪えていた笑いが込み上げてきてしまう。
 
 そんなさくらの様子を、優は首を傾げて不思議そうに眺めていた。

「……さくら、どうして笑ってるの?」

「ご、ごめん。何でもないの。……結婚式、私もすごく楽しみにしてるね」

 さくらは笑いで目尻に滲んだ涙を、そっと指で拭いながら答えた。

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