不死身の俺を殺してくれ

「スフレチーズケーキだ。紅子さんに教わり作ったんだが……。どうだ、我ながら上出来だろう」

 食器を下げた後、煉が食後のデザートを手にリビングへ戻ってくる。テーブルへ置かれたのは、ワンホールのチーズケーキだった。
 
 このケーキはさくらを元気付ける為に、煉が秘密裏に計画していたもので、協力人は無論、さくらの母親の紅子だ。
 
 だが、大好物を目の前にしても、さくらの表情はどうにも暗い。チーズケーキが大好物だと、予め母親の紅子から聞いていたが、違うのだろうかと不安がよぎる。

「あ、ありがとう……」

「なんだ、不満か?」

「う、ううん。凄く嬉しい。……でも、また太っちゃいそうだなぁ……」

 大きなチーズケーキを見つめたまま、さくらは小さく独りごちる。

 しかし、煉の最高傑作だと言わんばかりの自信満々な表情を見せられては、当然断れるはずもなく……。

 さくらは就寝前に、高カロリーなチーズケーキを食べる覚悟を決めた。

「ん? 何か言ったか」

 煉は早速、自作のケーキを切り分けようと、ナイフを片手に、さくらの独り言に反応する。

「ワンホールはさすがに私ひとりじゃ食べきれないから、煉も一緒に食べよう?」

「いや、俺は試作で散々食べたからな。だから、おまえが……」

「お願いっ! ね?」

 さくらは自身の顔の前で両手を合わせ、拝み倒すように頼み込む。煉はさくらの無意識の上目遣いに、不覚にもどきりとして、目線を逸らした。

「……そうだな。一人よりも二人で食べる方がいいか」

「じゃあ、今日の、お酒はどうしようかな」

「ああ、ちょっと待て。飲む前に話がある」

 晩酌の用意をしようと立ち上がったさくらを引き留める。突然の待ったをかけられたさくらは首を傾げた。


 さくらが泥酩(でいめい)しては、まともに話をすることも出来なくなる。そうなる前に、煉はさくらに一つ伝えなければならないことがあったのだ。

 晩酌の代わりに二人分のコーヒーを用意して、切り分けたケーキを小皿へ乗せる。さくらが一口目を口にしたところで、煉は話を切り出した。

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