不死身の俺を殺してくれ
「──それではこれより、新婦様よりブーケトスが行われます。女性の皆様は前へ、お集まり下さい。注意事項としましては花束を受け取る際に、お怪我等をされませんよう、お気をつけ下さい」
司会進行役の男性がアナウンスをして、花嫁である優の前へ、女性達が続々と集まり始めた。
さくらと煉は主役である新郎新婦の二人から少し離れた場所で、式の進行を静かに見守っていた。
アナウンスを聞いた煉が、さくらに問い掛ける。
「行かないのか」
「うん。私はいいよ。それより、花束は誰が取るのかな」
「さあな。これは男が取ったら駄目なのか?」
「駄目、というより、男の人が受け取ったところを私は見たことがないから、分からないわ」
さくらは辺りを見渡す。
男性陣はブーケトスに集まる女性陣から、一周り距離を開けて、その様子を楽しそうに眺めている。
この結婚式には八重樫も出席しているようで、さくらは先ほど、その姿を遠目から見掛けていた。
いつも身に着けているビジネススーツとは違い、礼服を纏《まと》った八重樫の姿は、まるで、ブライダルモデル並みの着こなしで、周りの男性達との差は一目瞭然。見た目の威力は、煉よりも八重樫の方が上々だった。
「あ! 始まるみたいね」
ざわめきが一際大きくなり、優は女性達の位置を確認した後、ゆっくりと背を向けた。
「それじゃあ、行きまーす! えいっ!」
優の合図と共に、可愛らしい淡い桜色の花束が、晴天に向かい、宙に舞う。
そして、その花束を受け取ったのは──。
「痛っ!!」
飲み物を取りに向かおうとしていた、不運続きの八重樫だった。
八重樫は頭上から落下してきた花束を、地面に落とさないように、バウンドさせながら受け取る。
「八重樫くん、ごめんねー! でも、おめでとうー!! 次は八重樫だよー、幸《さち》あれー!」
優がしたり顔で、声を張り上げながら八重樫に向かって言う。
「え? なんで? ち、ちょっと待ってください! 受け取れませんよ、俺!」
乙女チックな花束を手にしたまま、勘の鈍い八重樫は訳も解らずに、動揺と困惑を同時に浮かべた表情で優を見据える。
ブーケを受け取る為に優の傍に集まっていた女性達は、八重樫に対してブーイングを起こすどころか拍手喝采の嵐。受け取った本人は状況を理解出来ずに、ますます混乱している様子だった。
この一連の流れは、実は優自身が予め仕込んでいたものだ。つまりは確信犯。