冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「だから、ごめんね」
「なんでっ……」
諦められない気持ちは彼も同じなのか、問い詰めるように声をあげながら私の手を掴んだ。
するとその拍子に、手の中からネックレスがするりと抜け、弧を描き飛んでいく。
そしてそれはそのまま、すぐプールの中央へ落ちてしまった。
ポチャンという小さな音ともに、ネックレスは水底へ消えていく。
「あっ……!」
せっかく久我さんからもらったものなのに!
私はネックレスを追いかけて、とっさにプールの中に飛び込もうとした。けれど馳くんの腕が私の腕を掴んでそれを阻止する。
「待て!やめとけって!」
「離してっ……大事なものなの!!」
ほんのいっときでも、ただの責任感からでも、彼の恋人としていられた証。
それをこのまま、手放すなんてできない。
飛び込ませまいと押さえつける馳くんの力強い腕がもどかしく、必死にプールへ手を伸ばす。
久我さんとの思い出なのに、それすらなくしてしまうなんて。
バチがあたったのかな。好きな人の幸せを願えない私だから。
……だって、願えないよ。
本当のことを隠していたいと、ずるくもなる。
久我さんのことが好き。
だから、その隣にいるのは自分でありたい。
笑顔も困った顔も私だけに見せてほしい。
そんな願いがあふれだす。
同時にこみ上げた涙で景色がにじんだ、その時だった。
突然通路からのドアが開き、誰かが入ってくる。
そしてその姿は、ジャケットを脱ぎ捨てると躊躇なくプールへ飛び込んだ。