冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「私のこと、嫌いになってないんですか……?弱みに付け込んで、本当のこと隠してたのに」
ネックレスを手のひらにぎゅっと握って問いかけると、久我さんは小さく首を横に振る。
「嫌いになんてなってない。……顔もまともに見られなかったのは、自分に対する不甲斐なさのせいだ」
不甲斐なさ……って、なにに対して?
意味がわからずその言葉の続きを待つと、久我さんは悲しげに細めた目で私を見つめた。
「霧崎はあれだけ一途に気持ちを伝えてくれていたのに、ずっとあんな気持ちを抱えていたんだな。なのに、気づけなくてごめん」
『ごめん』、そう口にした彼は「でも」と言葉を続ける。
「ひとつ言っておく。あの日俺が抱いたのは他の誰でもない霧崎だ。霧崎だから、触れたいと思ったんだよ」
彼女の代わりなんかじゃなく、私だから。あの日彼は触れて、抱きしめてくれた。
そんな、夢みたいなことを言ってもらえるなんて信じられない。
だって、久我さんの好きな人は……。
「だって……久我さんは、小宮山さんを好きなんじゃないんですか?」
涙をこぼしながらたずねると、久我さんは苦笑いをみせる。
「まずそのことだけど、ないから」
「だってあの時、『りさ』って呼んでたじゃないですか!」
「はぁ?そんなわけないだろ、俺は確かに『霧崎』って呼んだ。呂律が回ってたかは自信ないけど、呼んだことは覚えてる」
『霧崎』って、私を呼んだ?
だってあの時久我さんはたしかに『りさ』って……
霧崎、きりさき……
『……りさ……』
って、そういうこと!?
ただ呂律が回っていなかっただけで、久我さんは最初から私のことを呼んでくれていて……全て勘違いだったのだと知って拍子抜けしてしまう。