冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「私のこと、嫌いになってないんですか……?弱みに付け込んで、本当のこと隠してたのに」



ネックレスを手のひらにぎゅっと握って問いかけると、久我さんは小さく首を横に振る。



「嫌いになんてなってない。……顔もまともに見られなかったのは、自分に対する不甲斐なさのせいだ」



不甲斐なさ……って、なにに対して?

意味がわからずその言葉の続きを待つと、久我さんは悲しげに細めた目で私を見つめた。



「霧崎はあれだけ一途に気持ちを伝えてくれていたのに、ずっとあんな気持ちを抱えていたんだな。なのに、気づけなくてごめん」



『ごめん』、そう口にした彼は「でも」と言葉を続ける。



「ひとつ言っておく。あの日俺が抱いたのは他の誰でもない霧崎だ。霧崎だから、触れたいと思ったんだよ」



彼女の代わりなんかじゃなく、私だから。あの日彼は触れて、抱きしめてくれた。

そんな、夢みたいなことを言ってもらえるなんて信じられない。

だって、久我さんの好きな人は……。



「だって……久我さんは、小宮山さんを好きなんじゃないんですか?」



涙をこぼしながらたずねると、久我さんは苦笑いをみせる。



「まずそのことだけど、ないから」

「だってあの時、『りさ』って呼んでたじゃないですか!」

「はぁ?そんなわけないだろ、俺は確かに『霧崎』って呼んだ。呂律が回ってたかは自信ないけど、呼んだことは覚えてる」



『霧崎』って、私を呼んだ?

だってあの時久我さんはたしかに『りさ』って……

霧崎、きりさき……



『……りさ……』



って、そういうこと!?



ただ呂律が回っていなかっただけで、久我さんは最初から私のことを呼んでくれていて……全て勘違いだったのだと知って拍子抜けしてしまう。


< 108 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop