冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「あれ、でも久我さんあの次の日『記憶ない』って言ってませんでした?」
そう、彼は『記憶がまともにない』と言っていて、その責任感から付き合うことを提案していた。
けど今の話ぶりではまるで、全て覚えていたかのようだ。
それをたずねる私に、久我さんはバツが悪そうに口元を手で覆いながら下を向く。
その表情は少し照れくさそうだ。
「……7つも年下で部下のお前に対して、気になってたなんて言って、引かれたくなかったんだよ。だから、記憶がないとか責任がとか言ってとりあえず近づくきっかけがほしかったんだ」
じゃあ久我さんは最初から、私に好意を持ってくれていたということ……?
初めて知る事実が嬉しくて、だけどまだ信じられなくて、素直に喜べないまま。
「でも、小宮山さんのことよく見てたじゃないですか……それに、この前のイベントの時もすごく優しい顔で笑ってるの見ました」
小宮山さんに対する特別な視線や、先日の親密な姿。
それらの理由をたずねると、久我さんは渋い顔で濡れた前髪をかきあげた。
「そりゃあ、身内なんだから気にするし名前でも呼ぶ」
「へ?」
身内……って、どういうこと?