敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
スタジオのフリースペースには、電子ピアノが一台置かれていた。

ある日、レッスンを待っていると思われる幼い女の子が、その電子ピアノを弾いていた。
私はそれを片隅で聴いていた。

すると、曲を弾き終えた女の子が私の元へやってきた。


「ねえねえ、お姉ちゃん。みいちゃんのピアノどうだった?」

一瞬戸惑ったものの、すぐに返した。

「すごく上手だったよ。たくさん練習したのが伝わってきた」

「うん。みいちゃん、毎日頑張ってるんだよ。お姉ちゃんもピアノ弾ける?
ねえねえ、何か弾いて!!」

「えっ」

みいちゃんは、私の戸惑いに気づくことなく、ぐいぐいと手を引っ張っていった。

「はい、どうぞ」

ピアノの椅子に促された私は、とりあえず座った。
横からキラキラした瞳に見つめられ、私は鍵盤に指を添えた。
そして、大きく息を吐いて弾き始めた。
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