real face
「お前、まひろに『俺は簡単には堕ちない』って啖呵切ったんじゃなかったのか」

「ああ、確かに。その啖呵切った時には、すでに堕とされていたってことだな。俺としたことが」

「お前が瞬殺か……すごいなまひろ。で、いつ思い出したんだ?」

「あの時のことなら、昨日蘭さんを送って行って、別れる少し前かな」

「キスで記憶が甦ったんだろ」

「なっなんで、知ってるんだイチにぃ!修から聞いたのか」

「ご名答。昨日修がここに来たんだ『まひろの男は翔なのかっ』て聞きに。宣戦布告だったんだろ、翔」

「さすがイチにぃだな。俺、本気だから。修を敵に回すことになるだろうけど、負けないから」

「了解。俺は静かに見守ることにするよ。翔、負けるなよ修一に」

「もちろん。ところでイチにぃに確認しときたいんだけど。イチにぃは本当にいいんだな」

どういう意味だ?

「イチにぃにとって、蘭さんはただの従妹なのか?それ以上の感情は……」

……はぁ、どいつもこいつも。
俺は確かに昔はまひろが好きだったよ。


過去の話だ。

「ただの従妹だよ。大事な妹みたいなものかな。俺の手で幸せにしてやることは出来ないから、他の奴に託すしかないんだ。ただし」

「ただし?」

「修一に託すわけにはいかないんだ。翔……まひろのこと、大事にしてやってくれ。俺はお前だったらまひろのこと幸せにしてくれると信じてるから」

これは、紛れもない俺の本音。

ヤバイな、俺まで本気スイッチ入れてしまったらしい。

「あ、蘭事務所の件ですが。次はあちらに出向く予定でいます。蘭さんも一緒でないと困るんですが、連れて行くの大丈夫ですか?」

「仕事だからな。あいつも父親と向き合ういい切っ掛けになるかもしれない。だけど珍しいな、翔がそんなことを気にするとは。有無を言わさず連れていく鬼主任じゃなかったか?」

「大事にしてやれと言ったのは誰ですか。もしもの時は俺がフォローしますから。じゃ、帰ります」

「明け方も俺の身体空いてるけど。もういいのか?」

「もう用済みですので」

ちぇ、つれねえな。

< 103 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop