real face
「俺も、兄貴の彼女に会ってみたいって思っていたんだ。偶然ここに来て会えるなんて運が良かったな」

シュウにぃは、私となつみんを交互に見て、ニヤリと気味の悪い笑顔を浮かべた。

「有田さんも、まひろも、気を付けるんだな。2人とも男慣れしてないみたいだから、心配になってくるよ。俺は兄貴のことも翔のことも昔からよく知ってるから、何かあった時は相談に乗るよ。まぁいつでも頼ってくれよ」

どうしたの?
シュウにぃがそんな事言うなんて……嵐が来るかも。
一体、何を企んでいるの……。

「美生、もう少し時間いいか?さっきの件でちょっと相談したい事がでてきた。事務所に戻ろう」

「はい、承知しました」

「じゃ、ここは俺の奢りな。お先に失礼するよ」

「待って!いいよ自分たちで払うから」

「いいからいいから。ちょっとくらい恰好つけさせてくれよ。あ、そうだった……まひろ」

真顔になったシュウにぃが言った。

「お前、家族にはまだ話していないんだろ。翔のこと」

「うん……まだ話してないよ」

だって、いつどうやって話したらいいのか分からなくて。
昨日はちょっとだけ、聞かれたから言ったけど。
佐伯主任に家まで送ってもらったってことを、新にだけ。
シュウにぃとの会話を聞かれてしまったらしくて、仕方なくだけど。
なんだか言いにくいよね……。

「新がおまえのこと心配してたみたいだぞ。翔と一緒にいたところを見られたんじゃないのか?」

………なんですって?



シュウにぃが行ってしまった後も、嵐の気配だけはとどまり続けていた。

「ねぇ、なつみんはご両親に話した?イチにぃと付き合ってるってこと」

「えっ、えっと、きちんとはまだ。電話でちょこっと『付き合ってる人がいる』ってくらいしか!本当だよ、まひろん」

なんか、焦ってない?なつみん。

「一弥さんは帰りが多分明日になるんじゃないかって言っていたし、今日も明日も会えるか分かんないし……ねぇ?」

そう、なんだ。
イチにぃのことだから用意周到なのかと思っていたのに。
両親への挨拶まだなんて、意外だな。
確かに仕事は忙しそうにしているけど……。

なつみんとイチにぃは順調だし心配ないはず。
それよりも、シュウにぃが何を考えているのかが気になって仕方なかった。



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