【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

チャペルの中では、今か今かとザワザワとした空気の中で、
式の始まりを告げる瞬間を待ってくれていた。



竣佑の関係で生演奏を引き受けてくれた
DTVTのオーケストラメンバーが、
式の開始を告げるアナウンスと同時に、
厳かにウェディングソングを奏で始める。


一斉にチャペル入り口に視線が集中し、
ゆっくりとドアが開いた時、
妹たち二人にベールの裾を持ってもらいながら、
父親と共にバージンロードを一歩ずつ歩いてくる如月がまっすぐに俺の方へと近づいてきた。


「光輝君、娘を頼んだよ」

俺の目の前、そう言ってお義父さんは如月と絡めた腕をはずして、
今度は俺が如月と腕を絡めながら、
祭壇の前までゆっくりと一歩ずつ誘った。


讃美歌斉唱、聖書朗読と続いて、誓約の時間。


牧師さんの問いかけに対して俺たちは返答し、
その後は、再び二人の妹がゆっくりと結婚指輪を持って祭壇へと歩いて来てくれた。


妹たちが運んできてくれた指輪を互いに交換し合い、
ベールアップと呼ばれる儀式。


如月の方へ一歩前に踏み出した俺はそっとベールに手を添える。

すると今度はゆっくりと如月が、
両手を前に組んで静かに体をかがめた。

そして俺がゆっくりと、
ベールを上げると如月はゆっくりと立ち上がる。


二人が立ち上がったタイミングで、
そっと如月を抱き寄せて口づけを交わした。



永遠の約束。



そう……俺はこれからの未来、
君の笑顔を守り続けるから。



だから一緒に歩いていこう。



病める時も、
健やかなる時も、
富める時も、
貧しき時も、




共に歩いていこう。
この命が尽きるその日まで……。




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