セカンドラブは魔法の味
「おばさん、お久しぶりです。今日は、ここにお泊りするの。よろしくね」
「え? 家には帰らないの? 」
「うん、お父さん。ずっと私の看病と、お仕事で大変だったもの。休ませてあげないと」
食卓の椅子に座り一息つく涼子。
「はい、涼子お姉ちゃんの大好きないちごミルクだよ」
結人がパックのいちごジュースを、涼子に持って来てくれた。
「有難う、結人君」
ジュースを飲んでホッと一息つく涼子。
「お父さん、やっと再婚相手が見つかったみたいだよ」
「え? 」
トワが驚いていると、茜がクスッと笑った。
「もう、涼子ちゃん。そうゆう事は、お父さんから報告してもらうのよ」
「そうだけど、お父さんって結構奥手みたいなの。だから、周りが騒がないと動いてくれないから」
「そんなことないと思うけどなぁ。お父さん、涼子ちゃんの事を一番に想っているから慎重なんじゃないの? 」
「そうだね。でも、も大丈夫だよ」
嬉しそうに涼子は言った。
夜になり。
心優が勤務を終えて病院から出て来た。
すると後ろから秀樹が追いかけてきた。
「桜本先生、ちょっと待って」
心優は立ち止まって振り向いた。
「ねぇ・・・。俺、まだあきらめていない。付き合ってもらえるまで、追いかけるぜ」
心優はそっと視線を反らした。
「どうして私なんですか? 」
「どうしてって」
「フラれた事がないから、ムキになっているのですか? 」
「そ、そんなんじゃないよ! 」
「・・・じゃあ、もうこれ以上。関わる事は、止めて下さい」
「なんでだ? 何で俺じゃダメなんだ? 」
「理由があるとしたら。・・・ハートが動かないから、ですね」
「ハート? 」
「はい。だって・・・」
心優は幸弥に想いを告げられた時の事を思いだした。
幸弥の声を聞くと胸がキュンと鳴った。
言葉を聞くと胸が熱くなって。
顔を見てしまったら・・・感動して、涙が溢れてきた。
初めて屋上で気持ちを伝えられた時も、本当は嬉しくて・・・。
でも突き放さなくてはならないと思っていた心優は、二度目の時に酷い言葉を言って幸弥を完全に遠ざけようとした。
それでもずっと・・・胸が痛くて・・・。
でも秀樹の言葉を聞いても、何も感じない。
あきらめないと言われても、何とも思わない。
「・・・本当に好きな人から言われれば、きっと、胸がいっぱいになると思います」
ヒューッと、心地良い風が吹いてきて心優の長い前髪がふわりとなびいた。
「ん? 」
一瞬だけ見えた心優の左目。
その左目に火傷の跡がないのを、秀樹は見た。