セカンドラブは魔法の味
10
 
 幸弥と心優が座ると、料理を並べてくれる茜とトワ。

 心優は様子を見ていて、そっと立ちあがり、トワの傍に歩み寄った。


「あの・・・手伝います」

「え? いいの、いいの、座ってて。今日は、お祝いだから」

「いいえ。・・・あの・・・右手、不自由ですか? 」

「あ・・・」

 トワはそっと微笑んだ。

「ごめんなさい、気づきました? 」

「はい。私、医師なので動きで分かりますから」

「そうだったんですね。すみません、昔、事故で右手無くしてしまったんです」

「え? ・・・そうだったんですか・・・」

「でも全然不自由じゃないんです。みんな、助けてくれるので。お母さんもお父さんも、北斗さんも子供達もみんな優しいから」


 そう言って、トワはそっと右手を心優に差し出した。

「心優さん、これからも仲良くして下さいね」

「はい・・・」

 心優はそっと、トワの右手を握った。

 
 手袋はしていても触れると義手であることは分かる。

 でもトワは何も気にすることなく、穏やかに過ごしている。


「トワさん。私も、小さい頃に家が火事に遭って。顔に大火傷を負って、ずっと傷跡を隠して生きて来たんです」

「え? そうなの? 」

「はい。今は、すっかり消えましたけど。でも、酷い顔をしている私にも。優しくしてくれる人が居て、本当に感謝しています」

「そうよね。あきらめなければ、どこかに優しくしてくれる人が絶対にいるものね」

「はい」


 笑い合うトワと心優。


 そんな2人を幸弥は遠目で見ていた。


「幸弥兄さん、とっても素敵な人だね心優さん」


 北斗が傍に座って言った。

「ああ、心優は僕にとって、世界で一番の女性だよ」

「ハルさんが亡くなって、幸弥兄さんが「もう誰とも結婚なんてしない」って言ってたから。ずっと心配していたんだ。涼子ちゃんも、年頃になると色々い大変だし。男が働きながら、子育てするって随分と苦労したって父さんも言っていたからさっ」
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