婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
施設を出ると、貴晴さんの手が自然と私の手を取る。
指を絡めて繋ぐと私の手が冷たいせいか「寒い?」と、貴晴さんは顔を覗き込んだ。
「大丈夫です。貴晴さんの手があったかいから」
一月の冷たい空気の中、寄り添って歩く人がいる幸せを噛みしめる。
貴晴さんは握った手をぎゅっと強く繋ぎ直してくれた。
「結婚式の日取りも考えなくちゃいけないね。里桜は、どんな式を挙げたいとかある?」
「そうですね……やっぱり、前に撮った写真みたいに、ウエディングドレスを着て挙げたいです。貴晴さんはどうですか?」
「俺は里桜の挙げたい式が挙げられたらいいよ。結婚式は、女性の憧れだっていうからね」
「じゃあ、洋司さんの希望も訊いて決めたいですね」
「里桜のご両親もね」
貴晴さんは腕を上げ、手元の時計に目を落とす。
「今から行けば、飛行機の時間にちょうどいいかな」
今日はこのまま、石川の私の両親にも挨拶に向かうことになっている。
こうして実家に結婚した相手と帰省する日がくるなんて、東京に出てきた頃の私には想像もできない未来だった。
「今更だけど、ちょっと緊張するな……」