婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「え? 何がですか?」
私を助手席に乗せながら、貴晴さんはフッと笑ってみせる。
運転席に乗り込んでくると「里桜の実家に行くことが」と言った。
「えぇ、どうしてですか?」
「だってもし行って、お義父さんに『やっぱり娘はやれん!』なんて言われたら」
「ま、まさか! そんなこと言われたって、もう籍入れちゃいましたし。それに、うちの両親は貴晴さんと一緒になることすごく喜んでいましたよ? むしろ、私に社長夫人が務まるのかって言ってたくらいで……」
どちらかと言えば、両親からしたら私の方が不安要素たっぷりだ。
貴晴さんは手を伸ばし、私の頭にそっと大きな手を載せた。
「じゃあ、ちゃんと里桜が俺を支えてくれていることと、里桜を生涯幸せにするって話してこないとね」
「貴晴さん……」
髪を撫でた手が首裏に回り、引き寄せられる。
こつっと額が触れ合うと、「里桜」と名前を呼ばれた。
「俺の初恋を叶えてくれて、ありがとね」
目を瞑り、貴晴さんはしみじみとそんなことを言う。
胸がじわっと温かくなって、小さく横に首を振った。
「そんなこと言ったら、私だって……好きになってくださり、ありがとうございます」
この広い世界で、巡り合うことは奇跡。
だけど、好きだと想いを寄せることはもっと奇跡。
そして、互いの想いが通じることは、もっともっと――。
「里桜……好きだよ、愛してる」
奇跡に違いない。
Fin.....*


