365枚のラブレター

言霊神社へ続く
100段の石段を駆け上がる



ハアハア息が切れるが
そんなこと気にしていられない



俺は絶対にクララに会いたいんだ!!



石段を上ると
拝殿の前に
クララが立っていた



「クララ!」



カラカラカラリリン
風鈴が揺れる参道を走り抜け
吸い寄せられるかのように
クララの前に来た



「あゆむ・・・くん・・・

 どうして・・・」



「なんでだよ・・・

 琉生と付き合ってるんじゃなかったのかよ」



「ごめんなさい・・・」



「なんで嘘ついたんだよ」



「だって・・・

 そうでも言わないと・・・

 歩君が私に気を使って
 紗耶香さんと真剣に
 付き合えないと思ったから・・・」



・・・・・



なんでだよ・・・



裏切ったのは俺なのに
なんで俺のために
そんなことするんだよ・・・



「クララ、ごめん!

 俺、クララが琉生や他の男にも
 優しくて嫉妬してた

 人の良いところを見つけるのが
 クララの良い所なのに

 俺だけ褒めろよ!
 俺だけ見てくれよ!って思ってた

 俺といるためにバイトしてくれてたのに
 バイトより俺と一緒にいてくれって思った

 それで・・・
 俺だけを見てくれる紗耶香に
 惹かれてしまったんだ

 でも俺・・・気づいたんだ

 俺が世界で一番大好きなのは
 紗耶香じゃない

 クララだって!!!

 だから俺と
 ずっと一緒にいてほしい!!!」



「歩君・・・本当?

 本当に私でいいの?」



「クララしかいない!

 俺の隣にずっと一緒にいてほしい人は!!

 だから俺と一生一緒にいてください!!」


「・・・はい・・・

 すっごく嬉しい・・・

 私も歩君が
 大好きだから・・・」



クララを見つめると
透き通った目にウルウルと涙がたまり
すーっと頬をつたった



俺はクララの頬に優しく触れると
吸い込まれるように
クララに口づけをした




その瞬間
空に輝くあまたの星が
流れ星のようにクララに向かって落ちてきた



驚いてクララから離れると
星たちがクララを覆うように輝き始めた



「なに・・・?

 これ・・・?」



クララが人間になる瞬間だ!



俺とクララが永遠の愛で結ばれた瞬間だ!




・・・・



え・・・?



クララが・・・

だんだん透明になっている!!




どういうことだ?


クララは人間になれたんじゃないのか?


消えないんじゃないのか?



「歩君・・・ごめん・・・」



クララが涙をボロボロ流し
ささやくように俺に謝った



「私、歩君と一緒にいたいのに・・・

 離れたくないのに・・・

 ダメみたい・・・

 これで、サヨナラみたい・・・」



そんなはずない!!


俺はどうしようもないくらいクララが好きだ!
クララは俺のこと
ずっと好きだったんじゃないのか?



「歩君が
 私と一生一緒にいたいって言ってくれて
 信じられないくらい嬉しかった

 だって、ずっと大好きだったんだもん

 歩君のこと」



「それなら・・・」



「でも・・・
 チャペルで指輪をもらった時と
 同じ気持ちになれないの・・・

 もしかしたら・・・
 また歩君が離れちゃう日が
 来るかもしれない・・・
 
 大好きな人が離れていく辛さは
 もう味わいたくないって・・・」



「クララ・・・」



「私は
 歩君が私のこと好きって言ってくれただけで
 もう充分だよ

 歩君、いっぱいいっぱい
 幸せをくれてありがとう

 大好きな人と出会って
 絶対に幸せになってね」



「クララ・・・

 まだ、言霊神社に願い事してなかっただろ!

 『消えないように』って
 一生に一度のお願いしろよ!」



「ダメだよ

 もう叶えてもらっちゃったもん」



「え?」


 
『もう一度だけ
 歩君に会わせてください』って」



「クララ・・・」



「琉生君、巻き込んじゃってごめんね

 舞ちゃん
 人間界で一緒にいてくれてありがとう

 みんな、バイバイ」



クララを包む無数の星が
黄金色に輝きだすと

空へ向かって上りはじめ
言霊神社の神殿の上でぴたりと止まった



笑顔で手を振るクララが
かすかに見えた



そして
ロケット花火のように
真っ暗な空に向かって
流星のごとく消えさった



7月7日
午前0時の出来事だった
 
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