365枚のラブレター

「歩!

 学校遅れるよ!」



次の朝
姉ちゃんが俺の部屋のドアを
ドンドン叩いたが
俺は布団の中に潜った



今日は学校に行ける気分ではない・・・



家族みんなが家を出たのを確認して
俺は言霊神社に向かった



クララが流星のごとく
空に消えたいった映像は
はっきり目に焼き付いている



でも
あれは現実なのか・・・



本当にクララは消えてしまったのか・・・



9時間前とは全く違う
のどかな言霊神社の風景が
夜のことは嘘だと言ってくれているようだ



いいや違う!


俺がただ
嘘だと思い込みたいだけだ・・・



俺はよくクララと座ったベンチに腰掛け
風鈴の音を聞きながら
クララのことを思い出していた



1年前の今日
風鈴が一斉に揺れる中
クララがドアから
ひょこっと顔を出したこと



一緒に卵焼きを食べて

公民館で子供たちと遊んで

魔法界に帰るときに
『バイバイ』って言ったクララが
天使みたいに可愛くて
俺は一目惚れをしたこと



そして
魔法界を捨てて
俺の所に来てくれたこと



尊兄さんと花純の結婚式には
チャペルでクララに
永遠の愛を誓ったこと


「クララ・・・大好きです

 一生俺の隣にいてください」 って



それなのに
俺はクララを裏切ってしまった



俺のことだけを見てほしいなんていう
ガキみたいな理由で・・・



そして
クララをたくさんたくさん泣かせて
傷つけてしまった



俺のせいで
クララがこの世から消えてしまった



おれはこれから
この罪をどう背負って
生きていけば良いのだろう・・・



俺は足をずりながら歩いて
神社の拝殿の前でパンパンと手を合わせた



もう、俺の願いは一度叶えてもらいました

でも神様お願いします

もう一度だけ願いを叶えてください!

『クララをこの世に戻してください』



クララが大好きで
いますぐ会いたくて
隣にいてほしくてしかたがないです



でも
そんな贅沢なことは言いません



俺のもとに来てくれなくてもいい

クララがこの世に
帰ってきてくれればいい



だから神様・・・
お願いします



どうかクララを

もう一度

生き返らせてください・・・



「だめ・・・だよな・・・

 俺の願いは
 もう叶えてもらってるからな・・・」



俺がのっそり後ろを振り返り
肩を落として歩いていると

白衣に紋章が入った紫色の袴をはいた
白髪の神主さんが話しかけてきた



「君、大丈夫かね?」



「・・・・・はい」



俺の表情を見て
大丈夫じゃないのがわかってしまったようだ



「私は20年以上前に
 君と同じような目をした若者に
 ここで会ったことがある

 君も
 誰かが消えてしまったのではないかね?」



「え?」



世界が灰色にしか見えなかった俺の瞳に
うっすら光がさしこんだ



「神主さん
 それってどういうことですか?

 俺に起きたこと
 何か知ってるんですか?」



「君の彼女さんは
 魔法界の子だったじゃろ?」



「はい!」



「この言霊神社は
 人間界と魔法界を繋ぐ
 唯一の場所なのじゃよ」



俺は固まってしまった


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