365枚のラブレター

パンパン


「クララがもどってきますように」


 

次の日から俺は
毎朝6時に家を出て
言霊神社に通った



ミンミンとセミが暑苦しくないて
汗が滝のように顔から流れようが

横なぐりの雨が俺を襲ってこようが

毎朝、毎朝
100段の石段をのぼり
言霊神社で願った




そして
1日1枚
細長い紙に
クララへのラブレターを書いて
神社に奉納した



俺の思いが
クララに届くように



俺はそのあと
15分ほど神社の掃除をして
学校の準備のために家に帰る

そんな毎日を過ごした




ツクツクボウシの鳴く晩夏が過ぎ

黄金色のススキが揺れる秋が過ぎ

商店街にイルミネーションが灯り始めても

俺の願いは叶わなかった




リーンリリーン



俺が悲しい顔をすると
俺の部屋の風鈴が
澄んだ音を響かせることがある



だんだん小さく消えていく
風鈴の音を聞くと
俺の心の傷を
さーっと癒してくれる感じがする



「この風鈴って
 心を癒してくれるクララみたいだな」



俺はしみじみ感じながら
何回も風鈴の音を聞いていた

 



「歩、久しぶり」



「兄ちゃん・・・」



「ちょっと外、出ないか?」



俺の部屋に来た兄ちゃんは
俺が避けてきた場所に俺を連れて行った



「駅前広場のツリー、綺麗だよな」



兄ちゃんの言葉に俺はあの日を思い出した



クララとこの場所で
クリスマスツリーを見た日を



ツリーを見て
公園で苺大福にろうそくを立てて
二人で消したあの日



あの日に戻りたいと思ってしまう
幸せそうに微笑むカップル達を見ると
俺の心は絞られたようにギューっと痛む




「クララちゃんとは、どうなったんだ?」



兄ちゃんには本当のことは言えない・・・

クララが魔法界から来たことも・・・

俺のせいで、消えてしまったことも・・・




「ん・・・離れ離れになった」



「そっか・・・

 お前がクララちゃんを好きだって
 思いは伝えたのか?」



「うん。もう、半年前だけどね」



「そっか・・・

 歩も辛いんだな」



「でも俺、まだクララが大好きなんだ!

 もう一度出会えたら
 今度は絶対に幸せにする!」



「歩・・・

 お前の思ってる幸せってなんだ?」



「へ?」



「ただ隣にいるだけじゃ、幸せにはできない

 歩、お前はこの先
 どう生きていくつもりなんだ?」



「・・・どう生きてくって?」



「クララちゃんを幸せにするってことは
 家族になって、養っていくってことだ

 働いて、家族を守る

 お前はそこまで考えて
 クララちゃんを一生幸せにするって
 思っているのか?」



そこまでは・・・

考えてなかった・・・



「高校を卒業して
 自分がどう生きていくのか
 きちんと考えるべきだ!」



尊兄ちゃんの言う通りだ!


俺は、二人で一緒にいられれば
幸せなんだと思っていた



でもそんなのは夢の中だけ



俺はクララを養える男に
守れる男になるよう
できるかぎりの努力をしなければいけない



「歩、きついこと言って悪かったな

 俺がお前の年のころには
 そんなこと考えてなかったんだ

 でも花純と結婚して
 女を幸せにするってことを考えた時に

 高校で仕事のことをきちんと
 考えておくべきだったと反省した

 まぁ、兄ちゃんぽいことを
 言いたかっただけだから
 あんまり気にしないでな」



「ううん

 兄ちゃんが言ってくれなかったら
 気づかなかった

 ありがとう」



「おう」



その日から俺は真剣に考えた



自分がどうやって生きたいのかって



そして答えが出た!



『クララ、メリークリスマス!

 俺は決めたよ!

 小学校の先生目指して、猛勉強を始める!

 クララに、応援して欲しい!』



俺がクララへの
1日1枚のラブレターを書き終えると



リリーン



風がない部屋なのに
風鈴の音が聞こえた気がした




そして俺は
次の日の朝
言霊神社に、この手紙を奉納した

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