365枚のラブレター
俺は
365枚の手紙をとろうと
笹に手を伸ばした時
背後から低い声がした
「お前が、高杉歩だな」
急いで後ろを振り返ると
そこには白シャツに黒いパンツをはき
黒いマントをつけた男の子が立っていた
「吸血鬼じゃ・・・
ないよな・・・」
「は!誰が吸血鬼だよ!
あんなうさん臭いオバケと
一緒にすんな!」
俺よりは年下そうだ・・・
ってか、宙に浮いてるし・・・
髪が紫色の吸血鬼はいないか・・・
「お前さ
俺がクララを譲ってやったのに
何やってんだよ!」
「は?」
全く意味が分からない・・・
「俺は魔法界の王子 エイトだ!
クララが俺の家庭教師やってたって
聞いてただろ!」
「う・・・ん
聞いたような・・・
聞いてないような・・・」
「クララの奴
これだから人間界に遊びに行くなって
止めたんだよ!
しかも、俺が人間界に事前に行って
わざわざ観光パンフレットを作ってやったのに
卵焼きの店しか行ってねえし!」
そう言えばクララと初めて会った日
以前奏多が中学生くらいの男の子に
『うちの卵焼きは幸せの卵焼き』
って言ったって
美紅さん言ってたな・・・
こいつだったんだ・・・
「歩、お前さ、
クララのこと本当に好きなのか?」
「好きだ!
出会った時よりも今が一番好きだ!
俺はもう、同じ過ちは絶対しない!
クララのこと、幸せにしてみせる!!」
「まあ~そうだろな
クララが消えてから
お前のこと魔法界から見てた
お前のクララへの思いが本物だってことは
俺もわかってるよ
俺も今、好きな女がいて
お前の気持ちもちょっとはわかるからな」
「じゃあ・・・
クララを・・・」
「俺にはクララをこの世に戻す力はない」
そうなのか・・・
魔法界の王子の力を借りても・・・
クララは戻ってきてくれないのか・・・
膨らんでいた期待が
針に刺されたようにプチンとはじけ
俺はその場にへたり込んでしまった
「親父、見てんだろ」
え?
親父って?
エイト王子の声を聞いて
神殿の上に人影が・・・
そしてその人影が
黒いマントをヒラヒラとなびかせて
ゆっくりと俺たちの前に降りてきた
「親父、歩とクララは
本当にお互いを大事に思ってるんだ
もう
許してやってもいいんじゃないのか?」
「やっぱりそれはできん!
これは魔法界の掟なのだ!
代々守り続けてきたことを
私の代で変えるわけにはいけない!」
エイトの親父と言うことは
この人が魔法界の国王なんだな
その国王が
掟を変えないと言っている
やっぱり無理なのか・・・
俺が肩を落としていると
柔らかな声が聞こえてきた
「そろそろ
魔法使いと人間の恋を
許してあげてもいいんじゃないのかの?」
「神主さん?」
神主さんは魔法界の国王に
諭すように静かに語りかけた
「人の心は、移り変わるものじゃ
永遠の愛は
誓いで縛り付けるものではない
日々の努力でつないでいくものじゃ
国王だって、わかっておるのだろう」
「でも
今まで守ってきた魔法界の掟が・・・」
「それに国王だって
もう許しておるではないか
だから魔法界の城の周りに
魔法使いを呼んだのじゃろ」
え?
いきなり
黒ずくめの人達が
俺から3メートルくらい離れて
360度俺を取り囲んだ
子供もいれば
白髪のお年寄りまでいる
数え切れないが
この言霊神社の境内を
埋めつくす数だ
よく見ると一人一人
うっすら透けている
「これって・・・
どういうこと・・・」
「クララは
私たちの魔法界で手放したくないほど
大切な子だ
子供からお年寄りまで笑顔で接して
癒しと元気をくれる子だからな
魔法学校の先生にも合格していた
本当は魔法界に残ってほしいと思っていた
でもクララの幸せを考えたら
歩殿と一緒にいるべきだと私も思う
魔法界の国王として歩殿に聞く
本当に、
クララを幸せにする覚悟があるのか?」
「はいあります
クララには
辛い思いや悲しい思いをさせることも
あると思います
でも、俺、必死に考えます
どうしたらクララが笑ってくれるかって
幸せを感じてくれるかって
だから、どうかクララと
一緒にいさせてください」
パチパチパチパチ
俺を取り囲む人たちから
鳴りやまない拍手が起こった
「クララのこと、頼んだぞ」
「はい」
急に
風がぴたりと止んだ
さやさやと揺れていた風鈴も
一ミリも動かない
俺を取り囲む人たち天を仰ぎ
一斉に杖を空に向けた
え???
その杖の先から
天に向かって一直線に
星の柱ができた
何千、何万もの
星の柱が
国王が杖を一振りすると
その星ぼしが
一斉に俺に降り注いだ
黄金色に輝く
周りが見えないくらい大量の星ぼしの中で
うっすらと
一人の影が目の前に映った
だんだんその影が濃くなり
はっきりと
わかった
・・・・・・
クララ・・・・
俺の視界が
涙でゆがんで
ヒックヒック
鼻をすすらずにはいられない
「歩君・・・
ずっと会いたかったよ」
ビー玉のような透き通った瞳が
優しく微笑んだ
「クララ・・・・」
俺は大好きで会いたくて会いたくて
しかたがなかったクララを
強く強く抱きしめた