「ひねくれモノめッ!」

国山クンの高校から少し車を走らせると、西辻さんのお店「フェリシア本店」が見えてきた。
先程国山クンに教えて貰った通りの場所に車を止め、店へ。

・・・ここからが本番と言っても過言ではない。気を引き締めなくては。


カランコロン、と入店を知らせる、ちょっとレトロ感のある音が鳴った。

「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ。」

迎えてくれたのは、初老の女性だった。
初めて見る方だ。と言っても西辻さん以外は知らないのだけど・・・
付けている名札を見ると、「西辻」と書いてある。
もしかして、西辻さんの奥様?

「初めまして、今日からお世話になる桜木です。」
「あら、あなたが。話は聞いてるわ、失礼したわねぇ。こちらへどうぞ。」
「ありがとうございます。」

奥様に案内してもらい、事務所へ。
お客様数人いたけど、いいんだろうか?

「お客様がいましたが、大丈夫ですか?」
「ああ、全員長年の常連だから大丈夫よ。それより私の自己紹介がまだだったわねぇ。マスターの妻で秋子(あきこ)と言います。主に開店準備とモーニングを担当しているわ。よろしくね、えぇと・・・」
「桜木朔です。今日から事務を担当、でいいんですかね?よろしくお願いします。」

正直自分の役割を言いきれない。合ってるだろうか。自信なさげに伝えると、ほほほ、と奥様が笑った。

「弘さんったらホントに突撃雇用したのねぇ。ちゃんとお仕事教えるから大丈夫よ。よろしくね、朔ちゃん。私の事は名前で呼んでねぇ。みんなそうだから。」
「分かりました。よろしくお願いします、秋子さん。」
「はい、よろしくお願いします。それじゃ、早速お仕事なんだけど」

カランコロン、と音が鳴った。

「フロアでお話しましょうかねぇ。」
「はい。」

秋子さんは書類を少し持ち、2人で事務所を出た。
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