「ひねくれモノめッ!」

フロアに行くと、老夫婦が入店していた。
夫婦は窓際の席に着くとこたらに気付き、声をかけられる。

「おはよう、秋子さん。新人さんかい?」
「おはようございます、今日も仲良しね。こちらは桜木さん。新しい弘さんのお世話係よ。」
「おはようございます、桜木です。よろしくお願いします。」

隠さずお世話係って言ってるのは良いのか!?

「あら、マスターは執事クビになったの?」
「そりゃあお前、若様だって男だからなぁ!ヨボヨボのマスターより若い姉ちゃんの方がいいだろうよ!」
「こらあんた!セクハラよセクハラ!ごめんなさいねぇ、桜木さん。」
「あはは、私は気にしてませんよ。」

セクハラが日常茶飯事のブラック企業にいましたからねぇ・・・その位全然平気ですよ、なんて流石に言えない!

「さて、注文はいつものでよろしくて?」
「ええ。いつもの美味しいのをお願いするわ。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいねぇ。朔ちゃん、こっちに来てくれる?」
「はい。」

着いていくと、厨房だった。
厨房とは言っても、半オープンキッチンで、ある程度フロアが見える作りになっているようだ。

「キッチン仕事は基本やらないと思うけど、知っていても良いかと思ってねぇ。」
「ですね。在庫管理等の把握にもなりそうです。よろしくお願いします。」
「朔ちゃんは真面目さんねぇ。」

秋子さんは手順良く、しかも私に分かりやすく説明しながら調理してくれた。

コーヒーを淹れ、トーストをオーブンへ入れ、フライパンに卵を落とす。その間にハムとバターを切り、サラダを盛る。ヨーグルトにジャム(今日は苺)を乗せて、モーニングセットの完成だ。

常連様は卵の調理方法が様々らしいが、卵は1人1個しか使ってない事も教えて貰った。ちなみに先程の老夫婦は堅焼きの目玉焼きだそうだ。

ホントに無駄の無い調理だった。
流石ベテランだ。
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