【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
買えない値段じゃない。だけど使いもしないものを買うのは……。
いや、部屋に置いて眺めるだけでも幸せかも……。
突然一臣さんが歩きだしたので、引きずられるように私も歩いた。
「買おう」
「でも、まだ決心が……」
「大丈夫だ、買うのは俺だから」
えっ!?
ショーウィンドウの端にブティックの入口がある。一臣さんは私を引きずって、迷わず入った。
「一臣さん……」
「買ったらきみにプレゼントする。きみはもらったお礼に、これからこのバッグで過ごすんだ。いい?」
「に、荷物が」
私はずっしりしたトートバッグを揺らしてみせた。店員さんが近づいてくる。
一臣さんは妙に真剣な目つきで私を見つめた。
「それを持っていないと具合でも悪くなるのか? 必要なものだけ出して、どこかに預ければいい。すみません、あのバッグをすぐに使える状態で」
気づいたら、タグを切り離され、中のクッションも取り出されたバッグが私の手の中にあった。
予想どおり、中も花柄だ。めまいがするほど理想のバッグ。
一臣さんがショップの隅のソファを指し、店員さんに許可を取る。
「すみません、ここをお借りしても?」
「もちろん」
私は途方に暮れた。バッグは思った以上に小さく、ここに入れるべきものを選別できる気がしなかったからだ。
「財布、スマホ、家の鍵……、ハンカチ、ティッシュ……」
「待て待て、ハンカチはともかくティッシュは二軍だろ」
「社会的生活を営む上での基本装備でしょう?」
「じゃあ聞くが、今日そのティッシュを一枚でも使ったか?」
……今日どころか、最後にいつ入れ替えたのかも記憶がない。黙った私に、一臣さんがほらな、と言わんばかりの表情をする。
「じゃあ、手帳……」
「たった数時間、食べて飲むだけなのに?」
「メイクポーチ」
「全部はいらないはずだ」
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