【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
私は悩み、小さな手鏡とリップを取り出した。財布、スマホ、鍵、ハンカチ、手鏡、リップ。それだけを新しいバッグに入れ、肩にかける。
思わず大きく息を吸ってしてしまうほど身軽に感じた。
私の顔つきが変わったのを見て、一臣さんが満足そうに微笑む。
「外にロッカーがあった」
彼も鞄、そして上着、私もバッグとジャケットをロッカーに入れ、再び手をつなぐ。走り出したくなるほど身体が軽い。
顔を見あわせて笑った。
「どう?」
「快適ですが、心もとない気もします。特に、ティッシュはやっぱり持っているべきだったんじゃないかとか……」
「そこらじゅうのテーブルに紙ナプキンがある」
完璧に手ぶらになった一臣さんが、片手を広げて広場を示す。
“いつもの自分”の最後のかけらが消えたのを感じた。ぎゅっと彼の手を握る。
彼がにこっと笑った。
「飲もう」
「はい!」
バターたっぷりのポテト、ピリッと辛いソーセージ、グリルした肉。そこらじゅうで食べ物が振る舞われ、ワインは選び放題。
「ワインの銘柄なんて、正直ひとつも頭に入らないな」
「いいんじゃないでしょうか、とにかく楽しめれば」
そうだな、一臣さんは、グラスをぐいとあおり、飲み干した。
広場の片隅のベンチがあいていた。歩き疲れた私たちは、座ることにした。
「浮かれて食べすぎました」
「花恋を浮かれさせることができたなら、俺も合格だな」
「私、けっこうよく浮かれてますよ? とくに一臣さんの影響で」
満腹のおなかをさすりながら答える。
彼は「そうなのか」と驚いた顔をし、長い脚を組んだ。
「知らなかった。やっぱり、まだまだだな」
< 125 / 142 >

この作品をシェア

pagetop