【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「お父さまの言葉ですか?」
「わかるか?」
なんとなく、と私は笑った。お父さまも銀行人生の中で、さぞいろいろなものを見て、巻きこまれてきたんだろう。
「ですが今のは、性差別発言ととられかねませんよ」
「父の時代の認識だ。見逃してくれ」
「CEOは一臣さんに謝罪するつもりでしょうか?」
「まさか。せいぜい、よく足元をさらわれつつ転ばなかったなとねぎらうくらいじゃないか。もっと早く刈宿さんの企みを叩けなかったことを笑われるかも」
「あの録音は?」
ワイングラスを揺らし、一臣さんがちょっと考える。
「愉快だから共有はするが、なにか動いてくれと頼むつもりはないよ」
「そうおっしゃるだろうと思いました」
「俺は報復したいわけじゃない。今後の身の安全には、そうしたほうがいいことはわかるが……、もっと建設的なことに時間を使いたい」
「わかります」
背後の広場で、なにかイベントが始まったらしい。バンドの生演奏と、陽気な拍手や歓声が聞こえてくる。
肩越しに軽く振り返り、一臣さんは明るい口調で言った。
「自分の心に少しでも背くことは、しないほうがいい。父の苦しみから、俺は学ばないといけない」
「そうですね」
「というわけで」
彼が突然姿勢を正したから、何事かと思った。つい「はい」とこちらもひざと腰の角度を直角にしてしまう。
「今から自分の心に素直になる」
「はい」
「このあと、うちに来ないか。きみとゆっくり過ごしたい」
私はぽかんとし、それから腕時計を見た。
「でも……」
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