【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
信号が変わった。黒くて大きな、なんて呼ぶんだろう、ジープのような四角い車は、走り出すとき、獣が踏ん張るような重みがぐっと身体に伝わってくる。
「その、似合わないっていうのは、どういう意味だ?」
「意味、といいますと」
「似合う似合わないの話じゃなくないか? 現に、名前だって花恋……」
「ああああああ!!」
突然大きな声を出した私に、諏訪さんもつられて「わああ!」と叫んだ。車が一瞬だけ左右に揺れる。
「運転中に驚かせないでくれ!」
「触れたくないって、私、書きましたよね!?」
「書いた?」
彼が目を丸くし、「ああ」とすぐに気づく。
「プロフィールか」
「この名前は、似合わないものの筆頭です。『どのような字を書きますか』と聞かれたときの、毎度の絶望といったら、もう……」
「重ねて聞くけど、似合わないって、つまりどういう感覚?」
困惑を顔に浮かべ、彼が本気で理解に苦しんでいるようだったので、私もうまい説明がないかと頭を絞った。
「……自分はふさわしくない、ということです」
「あの部屋にも?」
「そうですね。私よりもっとふさわしいだれかがいるのに、と思いながら暮らすでしょう。べつにそれがつらいわけじゃありませんが」
諏訪さんの顔に刻まれた困惑が、ますます深くなっていく。
「その、似合うだれかって、たとえばどんなイメージ?」
「うーん……、好きな洋服を着こなしていて、こう、メイクなどもばっちりで、髪や爪も手入れが行き届いていて……」
ついに彼は、しかめつらになって黙ってしまった。
しばらく無言で車を走らせ、やがて「よし」とハンドルを叩く。
「目的地を変えよう。インテリアの前に、やるべきことがありそうだ」
「え?」
「その、似合わないっていうのは、どういう意味だ?」
「意味、といいますと」
「似合う似合わないの話じゃなくないか? 現に、名前だって花恋……」
「ああああああ!!」
突然大きな声を出した私に、諏訪さんもつられて「わああ!」と叫んだ。車が一瞬だけ左右に揺れる。
「運転中に驚かせないでくれ!」
「触れたくないって、私、書きましたよね!?」
「書いた?」
彼が目を丸くし、「ああ」とすぐに気づく。
「プロフィールか」
「この名前は、似合わないものの筆頭です。『どのような字を書きますか』と聞かれたときの、毎度の絶望といったら、もう……」
「重ねて聞くけど、似合わないって、つまりどういう感覚?」
困惑を顔に浮かべ、彼が本気で理解に苦しんでいるようだったので、私もうまい説明がないかと頭を絞った。
「……自分はふさわしくない、ということです」
「あの部屋にも?」
「そうですね。私よりもっとふさわしいだれかがいるのに、と思いながら暮らすでしょう。べつにそれがつらいわけじゃありませんが」
諏訪さんの顔に刻まれた困惑が、ますます深くなっていく。
「その、似合うだれかって、たとえばどんなイメージ?」
「うーん……、好きな洋服を着こなしていて、こう、メイクなどもばっちりで、髪や爪も手入れが行き届いていて……」
ついに彼は、しかめつらになって黙ってしまった。
しばらく無言で車を走らせ、やがて「よし」とハンドルを叩く。
「目的地を変えよう。インテリアの前に、やるべきことがありそうだ」
「え?」