【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
車は百貨店の地下駐車場に入った。
マンションから10分ほどのドライブだった。立地も贅沢な住まいなのだ。
諏訪さんは鮮やかな手さばきであっという間に駐車スペースに停め、私を促して車を降り、店内入口を目指した。
「あの、どこへ……」
「洋服とメイクがあればふさわしくなれると言ってただろ。髪と爪はあと回しだ」
「えっ!?」
ずんずんと地下の食料品フロアを歩き、上りのエスカレーターに乗る彼を追いかけながら、まさか、と血の気が引く。
彼が足を踏み入れたのは、思ったとおり、化粧品フロアだった。
「ここで、なにを……」
「百貨店で、ものを選んで買う以外になにをするんだ?」
「無理です!」
思わず悲鳴のような声が出た。
「こんな場違いなところで、そんなことできません!」
「場違いじゃなくなるためにするんだ。なあ、あんなしっかりした理想があるのに、なぜそこに近づく努力をしない?」
「この服でいいってさっきおっしゃったじゃないですか」
「きみが好きで着てると思ったからだ!」
「好きで着てます! 私にはこのくらいが分相応です、じゅうぶんです」
「そんな思想で着られたら服もきみの身体も気の毒だ」
きっぱり言いきる彼の言葉を、よくわかると感じる自分と、わかりたくもないと思う自分がいる。
「どうしろと……」
「まず目をそむけるのをやめ、知ることだ。そのうえで興味が持てないならそれでいい。だが食わず嫌いは、人生への冒涜だと俺は思ってる」
人生ときたか……。
謎の熱意をもって、諏訪さんは私を引っ張っていく。黒や白を基調としたスタイリッシュなショーケースたちが、こちらに迫ってくる気がする。
彼のような恵まれた人にはわからないのだ、このみじめな気持ちが。もはや並んでいる商品そのものに見下されているような気になる、この立場が。
マンションから10分ほどのドライブだった。立地も贅沢な住まいなのだ。
諏訪さんは鮮やかな手さばきであっという間に駐車スペースに停め、私を促して車を降り、店内入口を目指した。
「あの、どこへ……」
「洋服とメイクがあればふさわしくなれると言ってただろ。髪と爪はあと回しだ」
「えっ!?」
ずんずんと地下の食料品フロアを歩き、上りのエスカレーターに乗る彼を追いかけながら、まさか、と血の気が引く。
彼が足を踏み入れたのは、思ったとおり、化粧品フロアだった。
「ここで、なにを……」
「百貨店で、ものを選んで買う以外になにをするんだ?」
「無理です!」
思わず悲鳴のような声が出た。
「こんな場違いなところで、そんなことできません!」
「場違いじゃなくなるためにするんだ。なあ、あんなしっかりした理想があるのに、なぜそこに近づく努力をしない?」
「この服でいいってさっきおっしゃったじゃないですか」
「きみが好きで着てると思ったからだ!」
「好きで着てます! 私にはこのくらいが分相応です、じゅうぶんです」
「そんな思想で着られたら服もきみの身体も気の毒だ」
きっぱり言いきる彼の言葉を、よくわかると感じる自分と、わかりたくもないと思う自分がいる。
「どうしろと……」
「まず目をそむけるのをやめ、知ることだ。そのうえで興味が持てないならそれでいい。だが食わず嫌いは、人生への冒涜だと俺は思ってる」
人生ときたか……。
謎の熱意をもって、諏訪さんは私を引っ張っていく。黒や白を基調としたスタイリッシュなショーケースたちが、こちらに迫ってくる気がする。
彼のような恵まれた人にはわからないのだ、このみじめな気持ちが。もはや並んでいる商品そのものに見下されているような気になる、この立場が。