【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
彼は自席に行き、引出しからクリアファイルを取り出すと、デスクの上に置いた。立ったままデスクに腕を置き、私をちょいちょいと指で招く。
呼ばれたとおり、彼のデスクの前に行った。1枚の出力が入ったクリアファイルが、こちらから読める向きに置いてあった。
左上に写真が入った、履歴書のような書類。それがなんであるか理解した瞬間、私は悲鳴をあげそうになり、実際にあげ、慌てて両手で口を覆った。
生まれてはじめて写真館で撮った写真。私のプロフィール。PR欄には朝から何度も改良を試みては失敗した文章が印刷されている。
『私の名前は左藤花恋。サトウのサは“ひだり”です。にんべんは……』
どうしてこれがここに!
「きみが登録した結婚相談所……というより、“仲人業者”だな。あれはいいビジネスだ、これから絶対に需要が増えてく」
「は、え……」
「あそこを選んだきみのアンテナはさすがとしか言いようがない。そしてあそこの社長であり仲人である女性は、俺の知人なんだ」
くらくらする頭で、なんとか聞いた話を咀嚼した。いかにも好きでこの仕事をしています、といった感じの、ふくよかでパワフルな初老の女性を思い出す。
「ち、ち、知人、ですか」
「親戚のようなものだ。あの相談所の立ち上げにも協力した。彼女はきみが俺のアシスタントとは知らず、『いいお相手がいる』と話を持ってきた」
諏訪さんが長い指で、私のプロフィールをトンと指さす。
動悸が激しすぎて、息苦しくなってきた。
「す、諏訪さんも登録を……?」
「いや、知人特別枠みたいなものかな。この歳で独り身なのを、彼女が気にかけてたんだ。俺も周囲がうるさくなってきてうんざりしてた。そしてこれをもらって考えた。ありなんじゃないか、とね」
もう彼がなにを話しているのかわからない。
倒れそうだから座りたい。許されるなら泣きたい。どうして決死の覚悟でこっそり登録した結婚相談の内容が、よりによってボスに……え?
……『ありなんじゃないか』って言った? どういう意味?
ふいに彼が顔をくもらせ、デスクの自分のいる側へ手招きする。
「顔色が悪いな。こっちへ来て、座って」
呼ばれたとおり、彼のデスクの前に行った。1枚の出力が入ったクリアファイルが、こちらから読める向きに置いてあった。
左上に写真が入った、履歴書のような書類。それがなんであるか理解した瞬間、私は悲鳴をあげそうになり、実際にあげ、慌てて両手で口を覆った。
生まれてはじめて写真館で撮った写真。私のプロフィール。PR欄には朝から何度も改良を試みては失敗した文章が印刷されている。
『私の名前は左藤花恋。サトウのサは“ひだり”です。にんべんは……』
どうしてこれがここに!
「きみが登録した結婚相談所……というより、“仲人業者”だな。あれはいいビジネスだ、これから絶対に需要が増えてく」
「は、え……」
「あそこを選んだきみのアンテナはさすがとしか言いようがない。そしてあそこの社長であり仲人である女性は、俺の知人なんだ」
くらくらする頭で、なんとか聞いた話を咀嚼した。いかにも好きでこの仕事をしています、といった感じの、ふくよかでパワフルな初老の女性を思い出す。
「ち、ち、知人、ですか」
「親戚のようなものだ。あの相談所の立ち上げにも協力した。彼女はきみが俺のアシスタントとは知らず、『いいお相手がいる』と話を持ってきた」
諏訪さんが長い指で、私のプロフィールをトンと指さす。
動悸が激しすぎて、息苦しくなってきた。
「す、諏訪さんも登録を……?」
「いや、知人特別枠みたいなものかな。この歳で独り身なのを、彼女が気にかけてたんだ。俺も周囲がうるさくなってきてうんざりしてた。そしてこれをもらって考えた。ありなんじゃないか、とね」
もう彼がなにを話しているのかわからない。
倒れそうだから座りたい。許されるなら泣きたい。どうして決死の覚悟でこっそり登録した結婚相談の内容が、よりによってボスに……え?
……『ありなんじゃないか』って言った? どういう意味?
ふいに彼が顔をくもらせ、デスクの自分のいる側へ手招きする。
「顔色が悪いな。こっちへ来て、座って」