庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「あの子とは付き合わないほうがいいってママが言ってた」
「アリサのこと? アリサは良い子だよ」
そこにいたのは、友達二人からなにか忠告めいたことを言われている椎花だった。
「夜逃げってわかる? あの子の家族は悪いことをして、その町にいられなくなった逃げてきたの。椎花ちゃんも物を盗られたりするかもしれないよ?」
「アリサはそんな子じゃない」
アリサという名前には聞き覚えがあった。確か以前ハーフの転校生がきたと、椎花が言っていた。きっとその子のことだろう。
「私の言っていることが信じられないっていうの?」
「例えアリサの家族が悪いことをしていたって、アリサ自身は悪い子じゃないもん」
「そんなのわからないじゃん」
「私は噂を鵜呑みにしているみんなほうが信じられない。私はアリサからきちんと本当のことを聞くまで信じないから」
それだけ言うと椎花は走って行ってしまった。
俺はその場で呆気にとられていた。それと同時に、あれは本当に椎花なのかと自分の目も耳も疑った。
泣き虫で、優柔不断で、いつも下ばかり向いている椎花が友達に向かってあんなことを言うなんて……。信じられない。
でももしかすると、今頃陰で泣いているのではないかと思い、俺はこっそり後をつけた。
だが椎花は全くそんなことはなかった。笑いながらそのアリサと中庭に座り込み、楽しそうに話しをしていた。その顔はキラキラと輝いていた。
どんな可愛いヘアピンをつけるより、化粧をするより綺麗だった。胸がドキドキと高鳴って、目が離せなかった。
バスケに戻った後も暫く椎花の顔が頭から離れず、俺は椎花を一人の女の子として見ていることに気がついた。椎花が好きだと、この時初めて自覚した。
胸が苦しくなる理由も、涙に弱い理由も、どれも椎花だったからだ。