庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
椎花に偉そうなことを言ったものの、これが案外難しかった。
「あーくそっ! もう一回!」
何度もポイが破れてはお金を差し出す。
桜太はとうもろこしをくわえたまま、他人事の様に突っ立っている。シスコンの癖に、こういう時は椎花より自分の小遣いのほうが大切なようだ。
その隣では椎花がハラハラとした様子で見つめていた。
「よし! 一匹ゲット!」
5回目で俺はなんとか一匹捕まえることができた。
「ほら、やる」
「いいの? ありがとう! 千晃くん!」
気がつけば所持金は0円。でも椎花の嬉しそうな顔を見ると、イカ焼きも焼きそばも、もういいやと思った。
「あーあ、イカ焼き食いたかった」
けれど出てくるのは皮肉めいた言葉ばかり。毎日毒づいては反省の繰り返し。
「千晃くんて、意地悪なのか優しいのかわからないよね」
「なんだよ、それ」
褒められているのかけなされているのか。
すると、つんつんと服の裾を引っ張られた。なにかと思い視線を下げれば、椎花が上目使いで俺を見ていた。そして「金魚、大切にするね」と、言うものだから、一瞬にして心臓が早鐘を打ち始めた。
今日は浴衣のせいもあり、その破壊力は5割増。それをわかっているのか、いないのか、目を潤ませまだ下から見ている。
無自覚って怖い。他の男にもそんな可愛い顔を見せているのか? そう思うとムカつい仕方なかった。
「は、早く行こうぜ花火。もう始まる」
椎花と桜太にそう言って先を急ぐ。だけどこの時俺はほんの少し勇気をだした。
「椎花、はぐれると面倒だから手、繋いでてやる」
椎花の小さな手を握り、花火会場まで歩いたのだ。
椎花を誰にも渡したくない。今もこれからも。俺の独占欲はこの時、火が付いたのだと思う。