庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
それと同時に、なぜ他の女子にあまり真剣になれなかったのかがわかった。きっと椎花という魅力的な子が近くにいたからだろう。
椎花より可愛い子はいない。心のどこかでそう思っていたから、香坂たちのようにテンションを上げることができなかったのかもしれない。そう結びつければ、どれも納得がいった。
◇
あの時の金魚は今も実家にいると、ついこの前桜太と一緒に飲んだとき言っていた。かなりの大きさに育っているとか。
思えば俺の長い長い片思いの歴史は、あの時すでに始まっていたのだ。
「社長、打ち合わせの時間です」
「あぁ、わかった。今行く」
窓の外から香ってくる金木犀に鼻腔をくすぐられながら、青かった自分を封印するように窓を閉める。
椎花に会いに行く準備は整ったと言ってもいい。会社も軌道に乗り始めたし、身の回りも整った。椎花が今どこで何をしているのかも掴めたし。
再び会えた時は、とびきり甘やかしてあげたい。今なら甘い言葉だっていくらでも言える気がする。
そんなことを想像しながら俺はオフィスを後にした。
その数日後、偶然再会することになるとも知らずに。
Fin.


