北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「大丈夫みたいです。思ったほど重くないです」
 リサイクル代行を始めるにあたって、ときどきとはいえ累の仕事を中断させてパソコンを借りつづけるわけにもいかないから、使わなくなった古いノートパソコンをまるごと貸してもらった。
 ノートというには大きめで、動きも鈍い。でも自分のスマートフォンで撮った売りたいものの写真をとりこんで、フリマサイトとかにアップするだけだ。ついでに就職活動に必要な書類を作る許可ももらっているから、
「すごく助かってます」
 累はこくりとうなずくと、
「ごちそうさま」
 食べ終わった皿とスプーンとお椀を持って、立ち上がった。
 そのとたん、「やばい」凛乃もテーブルに手をついて腰を浮かせた。累が視界から消えたから、庭から見える空が黒雲に覆われているのがよく見えた。
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