明日は明日の恋をする

ボケ～っとマンションを見上げていた私だが、ふと視線を下ろすとマンションから少し離れたところに見覚えのある男性と知らない女性が仲良く腕組みして歩いているのを見つけた。

「あれ・・まさか・・・。」

私は走ってその男女を追いかける。そして前へ回り込み恐る恐る顔を確認した。

「やっぱり・・義雄・・・。」

義雄…私の彼氏だ。隣の女は誰？聞きたい事はたくさんあるが、上手く言葉が出ず泣きそうな顔して義雄をじぃっと見つめる。

「るな、何でこんな所に・・つうか、その格好どうした？OLのコスプレか？」

義雄は半笑いで私のスーツ姿を見る。そして義雄の隣にいる女は、私を睨みながらしっかりと腕を絡ませて義雄に話しかける。

「ねぇその女、誰？」

「あ？コイツはホステスのるなっていうやつだよ。少し優しくしたら懐かれちゃってさ。困ってるんだよね～。」

「え～最悪ぅ。義雄は私の彼氏なんだからあなた諦めなさいよ。」

あんたの彼氏？違う、義雄は私の彼よ…と言ってやりたかったが言えなかった。口を開けても声が出てこない。その言葉の代わりに私の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。

お願い義雄…嘘だと言って…

いつもみたいに私が1番大好きだよって言って…

ふわっ

涙を我慢している私の頭に何かが乗ってきた。この香りは…社長の…？

私の顔を隠すように社長がスーツの上着を私の頭に乗せてくれたみたいだ。その優しさが逆に私の感情に触れて、次々と涙が溢れてきた。

「だからこんな男はやめて俺にしとけって言っただろ？明日香。」

社長は私の頭にポンっと手を乗せ義雄を睨む。

あれ？今、明日香って言った？

「あんた誰？」

義雄は社長を睨み返し、 一触即発状態だ。

「俺が誰だろうとお前に関係ない。今から明日香は俺の彼女だ。お前は金輪際明日香に近づくな。分かったな。」

社長は私を自分の方へ抱き寄せて義雄に言い放つ。そうか、社長は私が惨めな思いをしないように演技してくれているんだ。でも私の頭は混乱しまま、社長の胸を借りて泣き続けた。