明日は明日の恋をする
「あれ…シンさん?」

「良かった。覚えててくれたんだ。久しぶりだね。」

シンさんが進藤さんの父親で会長なの!?

シンさんは私がホステス時代によく会社の接待でお店を利用してくれて、いつも私を指名してくれた常連だ。名前を聞いても『シンさんと呼んでくれ』と言われ、名ばかりの社長をしていると言っていたが、まさかこんなところで再会するとは…。シンさんのシンって、もしかして進藤のシンだったのかな。

「この前、店に行ってるなちゃん指名したら辞めたって言われてショックだったよ。るなちゃんは僕の癒しだったからね。」

シンさん…会長は私を見てニッコリとする。その笑顔は進藤さんと似ていて少しドキッとした。

「この会社に居たんだね。るなちゃん、本当の名前は何ていうの?」

「水沢…明日香です。」

「明日香ちゃんか、良い名前だね。どう?今日食事にでも行かない?」

「ゴホン…冗談でも社員を口説くのは辞めてもらってもいいですかね、会長。」

進藤さんは咳払いをして話を中断させ、仕事モードのまま会長に説教をする。ニッコリしているが所々に怒りマークがついているような雰囲気だ。そしてその横で高瀬さんが必死に笑いを堪えているのが分かる。

「久しぶりに明日香ちゃんと話したかったのにな。いつからこの会社に勤めているの?」

「水沢さんには高瀬の代わりに秘書の仕事を臨時で引き受けてもらいました。」

「じゃあナオト君が帰ってきたから今日で勤務終了か。それは寂しいな。せっかくだからこのままここで働いたら?」

進藤さんと会話していた会長は再び私の方を見てニッコリする。

「いえ、次の仕事が…決まってますので。すみません。」

「そうか残念。でも何だがまた明日香ちゃんとは会えそうな気がするな。その時はゆっくり話そう。じゃあ帰るよ。」

「下まで送ります。」

会長と高瀬さんが立ち上がって社長室から出て行った。
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