My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
その言葉を反芻しながら私はラグを見上げた。と同時、彼が全ての怒りを吐き出すように大声を張り上げた。
「そもそも、てめぇがどこにいるのかさっさと教えやがらねぇから、こんな面倒くせぇことになってるんだろうが!!」
確実に階下にまで届いているだろう怒声に私は首を竦める。
だが言われている当人は相変わらず涼しい顔だ。
「だから言ったろう? 僕はカノンにこの世界をもっと見て欲しいんだって。大丈夫だよ、ちゃんとヒントはあげるから。でももっと僕に近づいてからだよ。結局振り出しに戻ってしまったようなものだからね」
「こっの……!」
エルネストさんはこの大陸を出たどこかにいるらしいと、ラグが以前言っていたことを思い出す。
振り出しとはストレッタやランフォルセのあるこの大陸に戻ってきてしまった、という意味だろうか。
「カノンもあまり無茶をしないようにね。でないと、いつかラグに首輪付けられちゃうかもしれないよ」
「え」
「付けるか!!」
クスクスと楽しげに笑うエルネストさんを見ながら、私は焦りを覚えもう一度口を開いた。
「あ、あの!」
――早くしないと、彼はきっともうすぐ消えてしまう。
「私がこの世界にいる間、元の世界ではやっぱり私が急にいなくなったことになっているんでしょうか?」