甘やかされ婚~年上の旦那様は、獣な本性を隠している~
さっき蓮君に言われた濃い隈は、マスカラが溶けてただけかもしれない。
とても彼の前に出られる姿じゃないことに気付き、私は慌ててドアに隠れるように身を寄せた。


そんな私を、蓮君はクスッと笑う。


「ちょうどいいや。俺も、お腹空いた。ちょっと遅いランチにしようか」


そう言いながら腕組みをして、目線を上に向けた。


「真由、なに食べたい? 冷蔵庫、なに残ってたかな……」


まさに、これからなにを作ろうか、逡巡している様子。


「あ、あのっ……!」


私は、思い切って言葉を挟んだ。


「ん?」

「ランチ。私が、作るよ」

「へ?」


そんな、驚くようなことは言ってないはず。
なのに、蓮君が本当に目を瞠ったせいで、おかしなことを言った気分になる。


「でも、真由、疲れてるだろ?」

「だって、蓮君は今仕事中だし」


即座に言い返すと、彼はきょとんと瞬きをしてから、ふっと目尻を下げて微笑んだ。


「俺は、誰に雇われてるわけでもない。自主的裁量労働制だから。真由と二人分の昼メシ作るくらい、どうってことないよ」


そう言って、ギシッと軋んだ音を立てて、椅子から立ち上がる。
こちらに歩いてくるのを見て、私は反射的に、ドアから逃げるように飛び退いた。
私の反応に、彼はふふっと笑う。
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