甘やかされ婚~年上の旦那様は、獣な本性を隠している~
病棟で姿を見るのは久しぶりだけど、オペが立て込んでいたわけじゃないようだ。
なにやらお土産っぽい大きな紙袋を、主任に渡しているのを見ると、休暇か出張の予定もあったのだろう。


「まあまあ! 一色先生、お気遣いありがとうございます」


いつも厳しい鬼主任の弾んだ声に、祥子が肩を動かしてくくっと笑った。


「主任、恋する乙女になっちゃって。十歳くらい若返ってるわ」


小声で揶揄する彼女に、私はただ苦笑を返した。
と、その時。


「橋詰さん!」


突然主任がこちらに顔を向けて、キビキビと私の名を呼んだ。


「はっ、はいっ!」


一瞬、祥子の揶揄が、聞こえたのかと思った。
私はビクッとして、シャキッと背筋を伸ばして立ち上がった。


多分、祥子自身も、私と同じことを考えたのだろう。
隠れるように背を屈めて、コソコソとテーブルの方に向き直ってしまう。


ずっるーいっ!
私に罪を被せて逃げる彼女を、じっとりと睨んでいると、主任はさらに質問を畳みかけてきた。


「昨夜、711を担当したの、あなただったわよね?」

「へ? あ、はいっ」


陰口の首謀者に仕立て上げられ、罪人の気分になっていた私は、業務の話題にも反応が遅れてしまった。
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