甘やかされ婚~年上の旦那様は、獣な本性を隠している~
「深夜勤、711担当したの、橋詰さんだろ。一昨日オペした渡部(わたべ)さん、昨日こっちに戻ってきたから、様子を教えてもらいたい」


淡々と告げられて、私はハッとしてポンと手を打った。
そうだ。
711の渡部さん、一昨日脳腫瘍摘出のため、開頭術を受けていた。


カルテで見るあらゆる書類の執刀医の欄に、一色先生のハンコが押してあった。
患者さんの夜間の様子を気にするのは、執刀医として当然。


「す、すみません! 記録遅くて。ええと……」


カンファレンステーブルに置いたカーデックスをバッサバッサと捲って、711のページを開く。
先生が見たい渡部さんの記録は、他の患者さんより綿密に、時間をかけて書く必要があるから、最後にしようと思っていた。


だから、先生に手渡した用紙には、昨夜の準夜勤の記録までしか残っていない。
その後のことは、口頭で説明するしかない。


「オペ当日、ICUで降圧剤を一度投与して以降、血圧は安定しています。硬膜外ドレナージからの排液量も、順調に減少してきております」


記録用紙に目を落とす一色先生に、あらゆる検査数値を伝える。
彼の目線はこちらには向かなかったけど、大事なところでは、何度かしっかりと頷いてくれた。
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