甘やかされ婚~年上の旦那様は、獣な本性を隠している~
「でも、休みの日くらい、一緒に過ごせるでしょ?」

「私の休み、平日ばっかりだもん。蓮君、作業は家でやってるけど、外に出てクライアントと会うことも多くて。ほんと、仕組まれてるみたいにすれ違いまくりなの」


仕事中は外している結婚指輪。
それを嵌め直した左手の薬指を視界に映して、「はあ」と声に出して溜め息をつく。
同期だから、夜勤が多いシフト状況は、祥子も私と同じ。
困ったように、「そうねえ……」と逡巡する。
そして、なにか閃いたのか、ポンと手を打った。


「でも、愛されてるじゃない」


それを聞いて、私はむくっと頭を起こした。


「愛されてるんじゃなくて……甘やかされてる? それは、今までとなんにも変わらない」

「結局、結婚して夫婦になったのに、年の離れた幼馴染を可愛がってるだけって思うのね?」


祥子の質問に、私は何度も頷いてみせた。


「まあ、家事は全部旦那様任せ。その上、そっちは清く正しいままじゃあ……真由が『奥様になれない』って思うのも無理ないか。なんせ、出会って二十年でも、交際期間ゼロ日。それも、きっかけは『責任』だもんね」

「う……」


そう――。
蓮君が『男の責任』で私に『プロポーズ』してくれた、今年のお正月の出来事が脳裏を過ぎる。


『あああ~……っ! わかった。じゃあ、俺、責任とって真由を嫁にもらうから!』
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