甘やかされ婚~年上の旦那様は、獣な本性を隠している~
今夜、深夜勤に就く私のために、旦那様が用意してくれた温かい夜食を食べながら、私は曖昧に返事を濁した。


「でも、フリーランスで在宅勤務って? なんの仕事してる人なの?」


一番端っこに座っていた先輩が、小首を傾げた時――。
みんなそれぞれ持っている医療スタッフ用のPHSが、一斉にバイブし始めた。


「っ、わっ!!」


全員、ほとんど同時に声をあげ、次の瞬間、ハッと息をのむ。
今、この病院内にいる医師・看護師への、緊急召集だ。


日中なら、コードブルーやイエローという院内放送がかかる。
今は夜中だから、患者さんの睡眠の妨げにならないよう、放送はできない。


でも、この召集の意味合いは、日中の放送とまったく同じ。
手が空いているスタッフは全員、召集元の病室に駆けつけなければならない――。


この一瞬で、休憩室に漂っていたどこか緩い空気が、ピンと張り詰めたものに変わった。
向かい側の先輩たちが勢いよく立ち上がり、バタバタと休憩室から出ていく。
私も、慌ててスープジャーをテーブルに置いた。
急いで髪をまとめ直して、腰を浮かした。


「せっかくの鯛茶漬け、無駄になっちゃったわね」


祥子が、私の後から出てきて、コソッと声をかけてきた。
口調はからかい混じりだけど、彼女の表情もキリッと引き締まっている。
私は小さく頷いただけで、祥子と二人、非常階段に走った。
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