シュガーレスでお願いします!
「ええっと……。有馬さん?」
「比呂先生……!!」
有馬さんは伏せていた顔を上げると、ふわふわのスフレケーキのような柔らかい笑顔を見せた。
今日こそは色よい返事をもらえるのかと期待で高揚している彼に、残酷な事実を告げるのは少々勇気が必要だった。
「もう、待ち伏せはやめて頂けませんか。職業柄、これ以上物騒な真似をされると警察に通報しないといけなくなります」
通報という単語を聞くと、有馬さんの表情が一気に硬くなった。
「私は弁護士なので、人から逆恨みされることもあります。あなたに悪意がないということは分かりますが、同僚はそう思ってはくれませんので……」
まさか、訴える口実を手ぐすねを引いて待っているとは言えない。
有馬さんはストーカー扱いされてショックを受けたようだが、私の説明に一応の納得はしたようだった。
「すみませんでした……。怖がらせるつもりはなくて……。ただ、比呂先生に会いたくて」
しょんぼりと肩を落として落ち込む彼を簡単に突き放せるほど、人でなしではないつもり。
私は有馬さんのコートの裾をつまんで、彼をこの場に引き留めこう言った。
「一杯ぐらいなら付き合います」