シュガーレスでお願いします!

「寒いな……」

簡易裁判所のある都心にも木枯らしが吹く季節になり、朝晩は暖房がないと耐えられないほど冷え込むようになった。

「11月も終わりですからね。ほとんど冬ですよ」

「もうそんな季節かあ……」

君島さんに冬を宣言されると、寒さをより一層感じた。

この間、秋の訪れを嘆いたばかりだというのにもう冬なのか……。

夏が終わった時も夏らしいことをしなかったと嘆いたのに、秋も同じように嘆くことになるなんてな。

「君島さんは、来年の予備試験は受けるの?」

上野先生はなんとはなしに君島さんに尋ねた。

「年明けにすぐ申込ですよね……」

普段は明るい君島さんの声がずーんと地の底に沈んでいく。

司法を目指す人間にとって、秋は司法試験の願書の受付が開始される重要な季節だ。

弁護士になるには、もちろん司法試験を通過しなければならない。

法科大学院を卒業していない場合は、司法試験の受験資格を得るために、さらに予備試験に合格する必要がある。

私も上野先生も予備試験を経て司法試験を受験した口である。

予備試験の願書の受付はもう少し先の年明けのことだが、試験を受けるという心構えが今から必要なことに変わりはない。

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