シュガーレスでお願いします!
「それじゃあ、街でナンパしてくる男性と変わらないじゃないですか。好きなら好きってはっきり言ってくれなきゃ、伝わるものも伝わりませんよ?」
何で男ってやつは、一番重要なところをないがしろにしようとするのだろうか。
喧嘩中の自分のことはすっかり棚に上げて、上野先生にアドバイスを送る。
「遠藤さん、今日はクリスマスケーキを予約しにsoleilに寄ってから帰ると言ってましたよ。今から追いかければ間に合うんじゃないですか?」
時刻は19時過ぎ。遠藤さんが事務所を出て行ったのは30分ほど前のことだから、運が良ければsoleilで彼女を捕まえることができる。
「でも……」
「私のことなら大丈夫です。夫に迎えに来るようにお願いしますから」
携帯を指さしながら気遣いは無用だと、努めて明るく申し出る。
「ごめん、比呂先生。やっぱり俺、行くわ」
背もたれに引っ掛けていたコートとマフラーを素早く身に着け、ここ一番の男気で遠藤さんをものにしようとする上野先生を拍手で送りだす。
ひとり事務所に残された私は誰も見てないのをいいことに、勢いをつけ椅子をクルクルと回転させ遊んでみせた。
「なーんてな……」
本当は慶太に連絡するつもりなんて最初からない。
今、背中を押しておかなければクリスマス当日はお通夜のような湿っぽい雰囲気になってしまう。
キリの良いところまで仕事を済ませたらひとりで帰ろうーっと。