シュガーレスでお願いします!
通行人から見えないようにナイフの切っ先が当てられたまま、葛西さんの旦那さんは私を近くの公園へと誘導した。
公園の中でも人気のない林の中に連れて行かれると、ドンっと背中を突き飛ばされ前のめりになって地面に転ぶ。
私はすぐさま体勢を起こしたが、彼がジリジリとにじり寄って来るせいで、地面に後ろ手をついてその場を後ずさるしかなかった。
「あいつの居場所を教えろ!!」
「教えられません……!!」
たとえナイフを目の前に突き付けられようと、彼女の居場所を教えることはできない。
「あいつは俺のものなんだ!!返せよ!!邪魔するな!!」
葛西さんの旦那さんに先日の爽やかさは見る影もない。
髭は伸び、髪はボサボサで、しわだらけのワイシャツにはシミがいくつもあった。
うつろな表情なのに目だけが爛々としていて、とても正気とは思えない。
この人には今は何を言っても通じないかもしれない。しかし、言わずにはいられなかった。
「なぜ葛西さんがあなたと離婚しようとしないかわかりますか?」
私は地面に手をついたまま、彼に問いかけた。
暗に離婚を勧めたこともあったが、葛西さんはどうしても首を縦に振ろうとしなかった。
その代わりに自分の夫が変わってしまったきっかけを私に話してくれた。