シュガーレスでお願いします!
高校時代からお付き合いを始めた当時、旦那さんは決して暴力を振るうような人ではなかったという。
しかし、葛西さんの旦那さんが大学を卒業して就職したのが運悪くブラック企業というやつで、過酷な残業を強いられる生活が続くにつれ、どんどん歯車が狂い出していった。
仕事のストレス、上司からのパワハラ、それが積み重なった結果、葛西さんに矛先が向いてしまった。
暴力に耐えられず一時避難したが、今でも葛西さんは夫が元の優しい人に戻って欲しいと願っている。それは……。
「彼女はどんなに痛めつけられても……まだあなたを愛しているんですよ」
病める時も健やかな時も……と神に誓うのは簡単なことだけど、実際に体現するのはとても難しい。
だからこそ、私は葛西さんの気持ちを尊重したいと陰ながら応援していたのだ。
「こんなことはやめましょう?あなたに必要なのは適切なカウンセリングです」
私は今ならまだ間に合うはずだと必死になって訴えた。
「うるさいっ!!偉そうに指図するな!!」
しかし、彼は説得に耳を貸そうとせず、激高して手に持ったナイフを振り上げたのだった。
……万事休す。
私は死を覚悟し、固く目を瞑った。
(慶太……っ……!!)
今わの際に頭に思い浮かんだのは、他ならぬ慶太だった。