シュガーレスでお願いします!
「彼を許せないという君の気持ちはよくわかる。それが当り前だ」
五十嵐先生はこんな未熟な私を否定せず、肯定してくれた。
そして、裁判に臨むときと同じように、丸めた拳を膝の上に乗せ背筋をピンと張るとさらに続けた。
「でもな、比呂先生。我々弁護士は法に照らし合わせて罪の重さを訴えることは出来ても、人に直接罰を与えることはできない」
五十嵐先生はかつて指導役だった先輩弁護士らしく、静かに私を諭す。
……五十嵐先生はいつもそうだ。
間違っている点を指摘せず、自分で気がつくように適切な助言を与えてくれる。私なら正解にたどり着けると信じているから。
大きく息を吸い病院の天井を仰ぎながら今まで弁護してきた人たちの顔をひとりずつ思い浮かべる。
私を信頼して弁護を任せてくれた彼ら、彼女たちに恥じない自分でありたいと強く思う。
「五十嵐先生……」
心を決めると、声を振り絞り五十嵐先生に伝える。
「示談の準備をお願いします」
「……わかった」
五十嵐先生は快く頷くと、葛西さんの旦那さんにも伝えてくると言って事務所に戻って行った。