シュガーレスでお願いします!
「比呂先生~!!」
人気のない深夜の病院に不似合いな激しい駆け足が聞こえてきて、にわかに辺りが賑やかになっていく。
「慶太が怪我したって?」
大輔さんは私の前でピタリと足を止めると、胸を押さえゼエゼエと乱れる呼吸を整えた。
慶太が処置室にいる間に大輔さんに連絡しておいたのだが、心配になってわざわざ病院まで足を運んでくれたらしい。
「よう、大輔」
慶太は右腕をヒョイと上げて、大輔さんに気安く話しかけた。
「おい、お前っ!!その右腕――!!」
包帯が巻かれた右腕を見て、大輔さんはムンクの叫びのように顔を歪ませ叫び出した。
soleil自慢の世界一のパティシエの腕にグルグルと包帯が巻かれていたら発狂して当然だろう。
ましてや今は繁忙期。
現実を直視できず、口をワナワナと震わ、床の模様を茫然と見つめる大輔さんに慶太は容赦なくトドメを刺した。