シュガーレスでお願いします!
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「比呂先生には夫ともども大変お世話になりました」
事務所に挨拶にやって来た葛西さんは、そう言うと私に深々と頭を下げたのだった。
葛西さんの旦那さんが起こした傷害事件は警察に被害届を出すこともなく、示談の運びになった。
右腕の治療費と一般的な金額の慰謝料を支払うということで合意し、念書にサインをしたのは3日前のことだ。
世界一のパティシエの利き腕を傷つけたことを思えば破格の値段と対応だと思う。
「その後、旦那さんの様子はどうですか?」
「比呂先生に紹介して頂いたカウンセリングに通っています」
念書の中にはDV加害者専門の心療内科に定期的にカウンセリングに通うことも明記していた。
約束通り、カウンセリングに通っていると聞いて安心すると同時に、葛西さんのことが心配になる。