シュガーレスでお願いします!

「葛西さんは……大丈夫ですか?」

夫の事件を聞いた葛西さんは、祖父母の家から、旦那さんと一緒に暮らしていた自宅に戻ってきた。

「私、比呂先生の旦那さんに怪我をさせたって聞いて、初めて夫をビンタしたんです。すごーく痛かったです」

葛西さんがビンタ……?

夫がアパートで待ち伏せしていると言って震えていた彼女からは想像もつかない。

葛西さんは右手を見つめながら、切なげに瞳を揺らした。

「彼も私のことを殴りながら、辛かったのかなって思ったら……なぜか許せてしまったんです。まだ少し怖いけれど……ちょっとずつ歩み寄っていきたいと思います」

そう言って笑顔を見せる葛西さんを見て、私は彼女のことを少し誤解していたと認識を改めた。

本来の彼女はとても強い人で、私の心配など不要だったと反省する。

「そうですか……。また何かあったら直ぐに相談してください」

「はい。比呂先生の恩情には感謝しています」

彼女はもう一度深々と頭を下げると、明るい表情で事務所から出て行った。

すると、葛西さんと入れ違いで、慶太が事務所にやって来る。

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